hey yo!
とラッパーのような挨拶から始まりましたが、日本のhip-hopミュージックを語るうえで避けては通れない重要人物であるラッパー"漢a.k.a.GAMI"の自伝、「ヒップホップ・ドリーム」について紹介していきます。
それでは行ってみましょう!
この本の特徴

本の流れとして、漢というラッパーが生まれてから2015年までの出来事がつづられています。大まかに分けると、
- 少年時代
- ラッパーになってから
- レコード会社との裁判
といった感じになっています。
章のはじめのページに毎回、漢の楽曲の歌詞を黒板にチョークで書いたようなイラストが配置されています。実際に、その章に関係するような歌詞を載せています。
本文は漢の日記のような語り口調なので、非常に読みやすく仕上がっています。そもそも彼は最近メディアにhiphopを広めるためにいろんな番組に積極的に出演して、その見た目から想像できないようなお茶目なキャラを垣間見ることができるようになりました。この本にはそういうエピソードが散りばめられているので、所々クスッとしてしまうと思います(笑)
あとは、優しいことに本文中に登場するアーティストや組織の説明を章の終わりにまとめて注釈で載せてくれています。
漢少年の日々

漢の少年時代の写真というと、導(みちしるべ)というアルバムのジャケットで確認できますね。ちなみにこのアルバムは本書で書かれているレコード会社とのゴタゴタのせいで漢サイドに利権がありません。なのでいくら売れてもお金が入ってこないというわけですね。まぁ、そういった話はひとまず置いときましょう。
さて、漢少年はどんな子供だったのか、というわけですが生まれからストリートではなかったようです。彼がどんな家庭に生まれてどんな少年時代を過ごしたのかが事細かに書かれています。スポーツ、音楽そして不良少年らしい悪事などなど。そして、少年時代の人間関係が現在にどう影響をもたらしているのか、その辺を含めて楽しめる内容になっています。
ラッパーになってから

ここでは漢という人間が、どのようにしてラップの世界に入っていったか、そしてラッパーとしてのキャリアについて語られています。私は、普段から日本海外問わずヒップホップを聴きますが、未だに「日本語ラップはダサい、海外のモノマネ」などと馬鹿にする層が一定数いるように見受けられます。
まぁ、人の好みや価値観はそれぞれなので放っておけばいいのでしょうが、漢はそういった声に楽曲を出すといった形でしっかり反応しているようです。
当時は今よりも「日本語ラップはアメリカのモノマネ」という偏見を抱くヤツや「日本語ラップはダサい」と食わず嫌いをするヤツが結構いた。(中略)俺は日本語ラップのラッパーだという自負があったから、そういう"日本語ラップ反対派"の意識は変えていきたかった。
ヒップホップ・ドリーム
ラッパーになってから、出場したMCバトルのイベント"B-BOY PARK"に出場して、現在日本語ラップの頂点に君臨するKreva(クレバ)と対戦して敗れたときの感想から、般若が起こす騒動からB-BOY PARKが消滅してしまうまでの経緯について書かれています。
今ではMCバトルと言えばUMBですが、そのUMBがどう発足したのかについてガッツリ説明されています。この本が発売されてから半年後にKOKという大会が開催されるのですが、それに関連する本を紹介した記事を以前書いてますので、読んでいただけると嬉しいです。
そして、そのUMBを取り巻く裁判へと向かってしまうのです…
LIBRA(ライブラ)レコードとの裁判

正直なところ、この話が本書のメインで間違いないでしょう。この話はライブラレコードという会社がいかに姑息で卑劣なのかを告発している内容になっています。このレコード会社が所属アーティストたちに働いたパワハラや不正の数々。
ハッキリ言ってこんなことが日本の音楽レーベルで本当に起きてるのか?と疑いたくなるような酷さです。暴力とギャラに関する不正を具体的にここに書くとgoogleから注意を受けるようなレベルです。
それでもなお、裁判という形をとりアーティストたちのために戦う漢の"覚悟"が伺えます。
最後に
この本を手に取ろうと思ったキッカケは、彼が地上波で出演していた"フリースタイルダンジョン"という番組で紹介されていたからです。普段自分が勝手にイメージしている漢さんはどんなことを語るのだろうか、というのが知りたかったからです。
手に取って正解でした。本の構成がうまいな、と感じます。いきなりシリアスな裁判について語っていたら読者の身構えてしまうし、読んでいても楽しくない気がしますよね。その点をふまえて、少年時代などのエピソードを序盤に持ってきて漢という男のバックグラウンドを見せることによって読者を引き込むというスキルを発揮しているように思えます。
2017年にはyoutubeにも進出し、シバターとのゴタゴタがありましたが、二人が手を組んだりすればもっと面白い世の中になったのではと少し残念な気持ちにもなりました。
日本語ラップのこれからに期待できるような一冊でした。最後まで読んでいただきありがとうございました。
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