「筋トレが最強のソリューションである」
というフレーズはご存知でしょうか。
Testosterone(テストステロン)氏の言葉ですが、Twitterをやっている人なら、たまにタイムラインに流れ込んでくることによって知っている人は少なくないようです。
今となってはフォロワー数も100万人超え(2020年時点)で、何か呟けばリツイートやいいねの数がまるでバズっているかのような状態になる巨大アカウントに成長しているようです。
私がこのアカウントを発見した当初はまだフォロワー数が一万人にも満たない状態でした(それでも十分すごいと思いますが)。
さて、今回は筋トレが鬱(うつ)を改善するのか、ということを私の実体験と国内外の論文なども参考にしながら考えていきます。
それでは行ってみましょう。
そもそも鬱(うつ)とは

誰しも落ち込んだり、暗い気持ちになったりすることはありますが、そもそも鬱(うつ)って何でしょうか?
「憂うつである」「気分が落ち込んでいる」などと表現される症状を抑うつ気分といいます。抑うつ状態とは抑うつ気分が強い状態です。うつ状態という用語のほうが日常生活でよく用いられますが、精神医学では抑うつ状態という用語を用いることが多いようです。このようなうつ状態がある程度以上、重症である時、うつ病と呼んでいます。
厚生労働省
うつに関して知識が乏しく「鬱は甘えw」みたいなことを言ってしまう人は現代でも存在するようです。
実際に私もその類でしたが、身内がうつになったり、短期間ですが自分がうつ状態になった経験から考え方が変わりました。
そのようなことを踏まえて、筋トレなどの運動(スポーツ)が鬱に対して効果的かどうかを考えていきます。
運動と精神疾患の関係性
うつ状態で運動できるのか

この項目は私の実体験になりますので、興味のない方は飛ばしていただいて大丈夫です。
数年前に人間関係で相当なダメージを喰らった私は、短期間でしたがうつ状態になりました。
実際にその当時どのような症状が出ていたかというと、
- 不眠症(にもかかわらずベッドから出ることが出来ない)
- 人生に対する絶望
- 何もやる気が起きない
- 食欲不振
- 味覚障害
というような具合でした。
やる気が起きないので、当時大好きだったジムに1mmも行こうという気持ちにすらなりませんでした。
想像できないのです。自分がジムで筋トレをしている姿が。
ですので、「筋トレすればうつなんか治る!ウジウジしてないでジムに行け!」などという考えは浅はかだということを思い知らされました。
運動している人の特徴

ここでちょっと興味深い研究があったので紹介しておきます。
ある日本の大学の2年生全員を3年、4年次進級時まで追跡し、その学生たちがスポーツ系の部活やサークルを継続していることと鬱の関係性を調査したものです。
スポーツ系の部・サークル活動への参加を継続している学生は,もともとストレス対処力が高く,うつ・不安感が低い傾向が示された。更に,継続して無所属であった者と比較して,スポーツ系の部・サークル活動への参加を継続している学生は 2 年次進級時から 4 年次進級時を通してストレス対処力が高く,うつ・不安感が低い傾向を示した。
大学生におけるスポーツ系の部・サークル活動参加とストレス対処力,うつ・不安感の縦断研究:2 年間(3 時点)の追跡調査に基づく分析(2017)
これを見てわかるのは、スポーツが学生のメンタルを支えている(多少はそうかもしれませんが)というより、スポーツを継続している学生はもとからメンタルが強い人が多い、ということです。
現在ではどうか分かりませんが、一昔前の就職活動における採用では『スポーツを頑張っている方が内定しやすい』みたいな風潮があったようです。
ある程度の理不尽耐性が付いていると判断されるらしいです(個人的には正直くだらないと思いますが)。
フィットネスと精神科

以下の引用を読んでみてください。
フィットネスクラブ等で提供されるプログラム(特に集団指導)が,必ずしも“うつ症状”などといった特別の状況に対応するものではないことも挙げられ,“うつ症状”などの病態に熟知したフィットネス指導者が少ないことも事実である.
ただし,医療の側にも運動に対する理解が充分ではないケースもあり,投薬や入院処置などの医療モデルに頼る傾向があるのも事実であろう.
うつ病患者の運動療法の充実を目指して(2015)
私もフィットネスの業界に携わる身として感じるのが、やはり昔ながらの体育会系のノリが抜けきっていない、と感じます。Testosterone氏の影響もあってか良くも悪くも「落ち込んだ時はガンガン運動すればいいんだよ!」みたいな風潮が加速しているように思えます。
医療側も安易にフィットネスを患者にすすめることが厳しいという現状があります。安易にすすめられないというよりも、フィットネスに関してあまり詳しく知らないのではないでしょうか。
では、どうすればいいのか。
・・・
結局のところ、精神科側がフィットネスについて学び、フィットネス側も精神疾患について学ぶ必要があるのではないでしょうか。
例えば、
- 疾患について詳しいトレーナー
- フィットネスをたしなむ医者
これらがどこかで交わり、それを国が支援するところまでいけば強いのではと思います。
うつ病患者を対象とした研究

色々な研究論文を探し回って、代表的なものを見つけたので以下に紹介します。
うつ病患者 156名(平均年齢 57歳)を,運動群,抗うつ薬投与群,運動と抗うつ薬との併用群の 3群に分けて介入を行った.対象者に心拍数の 70%~85%の強度で,管理下でウォーキングないしジョギングを 1 回 45分間・週 3回・16週間実施したところ,3 群ともに抑うつ症状は改善し寛解状態に至った.
うつ病の運動療法
これをみたところ、
- 運動のみのグループ
- 薬を服用のみのグループ
- 運動と薬の服用の両方のグループ
この3群全てにおいて、良い方向に向かったという結果のようです。
「じゃ、運動だけでいいのでは?」というツッコミを入れたくなるかもしれませんが、多くの研究では、そこまで患者に深入りができない状態にあるように見えます。
深入りができないため、とても詳しく研究した論文が少ないです。
精神疾患の難しいところは、心のダメージは主観である部分が大きい、ということです。
ですので、この研究にさらに求めるとすると、そのグループの人たちが以前よりどのくらい良くなったかの詳しいアンケートが必要だと考えます。主観なのでそれが一番いい方法なのではないかと思います。
最後に
ここまで『運動がうつ病に効果的であるかどうか』について見てきましたが、いかがだったでしょうか。
実際のところ、運動がうつ病を改善するかしないかは断言できないと思います。
しかし、この記事で伝えたいことは、運動を取り入れてみるといいかもしれない、ということだけです。
何が楽しいかは人それぞれなので、嫌いな運動を無理やりやってさらに病んでは本末転倒ですよね。
筋トレをはじめとする運動だけでなく、将棋でも読書でも音楽でもいいと思います。
この記事が何かしらの参考になることを祈っています。
〈参考文献〉
うつ病患者の運動療法の充実を目指して(2015)
大学生におけるスポーツ系の部・サークル活動参加とストレス対処力,
うつ・不安感の縦断研究:2 年間(3 時点)の追跡調査に基づく分析(2017)
Depression in Athletes(2015)
うつ病の運動療法(2018)
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